研究者、活動家、学生、 旧東ドイツの市民など、国籍も職業もさまざまな人々がその実人生と『資本論』とのかかわりについて語るパフォーマンス。ステージには大きな本棚(そこには大量の「資本論」文庫版が並ぶ)が設置され、出演者はその中に腰掛けたり、時には棚から顔だけ出したりと、常にリラックスしたムードを漂わせている。ギャンブル依存症患者や投資詐欺で訴えられたコンサルタント、政治犯を父に持つマルクス研究者……彼らに共通のイデオロギーはなく、『資本論』との関係の深さも一定ではない。しかし、ざっくばらんな「語り」の集積はそのまま、この書物の普遍性や大きな存在感の証しともなった。「資本論」がなければこの舞台に立つことさえなかった人たちの生の言葉、佇まい。そのリアルに触れながら、私たちは「資本論」とは、また「資本主義」とは何かという抽象的な問いをいつになく身近に感じたのだった。(F/T09:Documentsより転載)
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
シュテファン・ケーギ、ヘルガルド・ハウグ、ダニエル・ヴェッツェル の 3 人によるアートプロジェクト・ユニット。2000 年、フランクフルトで結成された。公共空間におけるパフォーマンスやドキュメンタリー演劇の手法を用いた型破りなプロジェクトの数々で世界の注目を集めている。出演者には、プロの俳優ではなく作品テーマに則した特別な経験や知識を持つ一般の人々を起用し、「ある現実をそのまま舞台上にあげる」という手法を用い、高く評価されている。04 年以降はベルリンのヘッベル劇場に拠点を置き、それぞれが個人のプロジェクトを発表する一方で、メンバー 2 人、もしくは 3 人のプロジェクトも多く発表している。日本では、これまでに『ムネモパーク』(東京国際芸術祭 2008)、『カール・マルクス:資本論、第一巻』(フェスティバル/トーキョー09春、ミュールハイム戯曲賞及びオーディエンス賞受賞<06 年、ドイツ>)、『Cargo Tokyo-Yokohama』(フェスティバル/トーキョー09秋)などを上演し、好評を博した。 11 年、第 41 回ヴェネツィア・ビエンナーレ国際演劇祭にて、銀獅子賞を受賞するなど、受賞歴も多数。
「私は東京生まれです」「2020年のオリンピックを歓迎します」「今年セックスをしていない人」…。「はい」か「いいえ」か、さまざまな問いかけに応えて舞台上を移動し、時には自らの経験や考えをマイクの前で語るのは、東京都の人口統計(国籍、年齢、性別、居住区、世帯構成)を反映した100人の市民。 23区を「代表」 する彼らが劇場空間に描き出した「トーキョー」は、 この都市の標準的な姿か、演じられたイメージ
ボルボ社製トラックの荷台に乗り込んで体験する「荷物目線」の東京−横浜ツアー。埠頭で積み込みを待つトラックたち、海を挟んだ対岸に見える工場の影、流通センターで働く人々の姿……初めて見る風景に観客たちは感嘆の声をあげる。突如現れカーチェイスを仕掛けてくるデコトラ「芸術丸」や、路上で歌うブラジル人女性歌手など、フィクショナルな要素も交えた奔放さの一方で、車内では世界各国の道路事情や日本の運輸政策に関する