日本のレコード歌謡の草創期——昭和4年、「東京行進曲」の大ヒットで一世を風靡した歌姫・佐藤千夜子。激動した時代を奔放に駆け抜けた一人の女性歌手の生涯を、演出家・関矢幸雄が提唱する“素劇(すげき)”で描いた、劇団1980の代表作。舞台美術や照明、衣裳やメイクにたよらず、何もない空間の中で、”見立て”を駆使したシンプルで、しかも創造力豊かな劇様式です。見立てであるからこそ自由、何もないからこそ高まる想像力。第一回読売演劇大賞・演出家部門最優秀賞作品。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
「1980」と書いて「イチキュウハチマル」 、通称ハチマル。
横浜放送映画専門学校(創設者=今村昌平 現:日本映画大学)を母体とし、演劇科卒業生が創立メンバーとなって、文字通り1980年に結成。首都圏劇場での新作公演の他、演鑑公演・学校公演、ルーマニア・モルドヴァ・ブラジル・韓国等での海外公演を実施。また若手俳優陣を中心とする劇団アトリエでの実験的創作など、さまざまな形態で舞台作品を発表しながら、ハチマル的オリジナリティと演劇表現のさらなる可能性を追求し続けています。
『大往生』は、永六輔が25年に亙り、全国津々浦々を旅する中で耳にした無名人、普通人、一般人たちの言葉の数々から「老い」「病い」「死」について、どこかで誰かが語った名言・箴言を選び出し、一冊の本にまとめあげた“言葉の書庫”である。本作品は、ある架空の養老院を舞台に、人生の熟達者たちのおしゃべり、つぶやきをちりばめながら、測ることのできない命の重さ、生きることの楽しさ、そして何より、人間が創り出した最
文芸評論家・正宗白鳥が“人生永遠の書のひとつ”とまで評した深沢七郎の小説『楢山節考』。「素劇 楢山節考」は、決して姥捨ての話だけではありません。小さく貧しい村で、家族や村人たちが助け合って生きる四季折々の営みを、“楢山節”という唄を通して描いています。そこには、ヒトが生きることへの知恵があります。――楢山祭りが三度来りゃよ 栗の種から花が咲く――原作『楢山節考』が問いかけるヒトが生きる意味、生きと
「處女評判善悪鏡」通称『白浪五人女』。幕末の退廃を反映した因果応報と救いようのない不条理を、流れるような七五調のセリフと浄瑠璃を組み込んだ音楽性豊かな様式美で描き出した"白浪作者"黙阿弥、円熟期の一作。責め場・強請場・愁嘆場、さらに女白浪ならではの色模様を組み込み、からませ、誇張し、洗練させたこの作品を、藤田傳とハチマルが我流の舞台化。歌舞伎という演劇のエネルギーとリアリズムに迫りながら、ハチマル
時はバブルの真っ只中。本州と四国を結ぶ夢の懸け橋の工事現場で一人の出稼ぎ人夫が地上36メートルから転落死。死んだ人夫はお骨となって故郷に帰る。家族が集い成仏回向。ところがそこへのこのこ戻って来たのがお骨の主、石之澤鶴松。一同愕然!本人仰天!――骨壺の中身が俺ならば、生きてる俺は一体誰だ!?劇作家・藤田傳が、超巨大架橋建設の隅っこをしこたまえぐり出し、奇妙キテレツな“タライ回し”の物語を描いた現代寓