高齢化社会の難治の病であるアルツハイマー病。病気の進行により、記憶によって形作られる個人のライフヒストリーが不確かとなり、パーソナリティーまでも変貌する時、愛はどう記憶されるのだろうか? 本作はアルツハイマー病で記憶を失っていく医師と、消えゆく過去に翻弄される家族の物語である。魂と心の深淵をドラマによって探る濃密な舞台作品。綿密な取材と圧倒的な描写で病の世界に漂う主人公の心象風景と、その修羅の家族ドラマを描きだす。舞台作品として高評価を受けた本作を4K、6Kカメラで収録し、劇場の空気を忠実に表現。外山誠二と劇団民藝の白石珠江、駒塚由衣らの円熟の演技が結実し、ドキュメンタリーに比されると評された舞台作品。
あらすじ
脳神経科の医師・清棲滋は、ふとした骨折での入院を機に、そのまま退職を余儀なくされる。既に第一線を退いていた彼の引退は、さほど注目もされず、退院後、家族らが滋の家へ集まり、退院と退職、古希のささやかな祝いの宴をする。そこから、妻・清棲知佳と滋、そして娘夫婦の掛け違いが始まるが、マイペースの滋に周囲は振り回される。知佳と滋の生活は、ストレスフルなものとなっていく。都心に出かけるといっては財布を忘れ、携帯を無くしてトラブルだらけの滋。認知症の診断を勧められても取り合わない滋の前に、過去の記憶から様々な人物との関係性、トラブルが滲み出てくる。その後、知佳と滋の夫婦関係、病状は坂を転げ落ちるように悪化していく。滋の言動や行動には一貫性がなくなりつつあり、それを性格の特性と思い、見て見ぬふりをしてきた知佳は、現実を直視できない。介護負担に崩壊する家族関係の中、周囲やケアワーカーらの支えによって、夫婦はつながりを取り戻す。そして過去の心の旅路を辿りながら、滋は自分の心の深淵へと降りていく。最後に愛は残るのか?
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
有料オンデマンド配信。事前に会員登録が必要です。(月額2,189円+レンタル605円)
有料オンデマンド配信。事前に会員登録が必要です。(月額1,078円、レンタルともにあり)
有料オンデマンド配信。事前に会員登録が必要です。(月額550円会員登録+レンタル440円~)
嶽本あゆ美の作品を上演する上演ユニット。大内史子、杉嶋美智子が中心メンバー。オリジナル作品のほか、チェーホフや堀田善衞の小説の舞台化やミュージカルまで幅広い作品を創作する。川辺川ダム問題を描いた『ダム』で日本劇作家協会新人戯曲賞、文化庁芸術祭優秀賞受賞(演出:藤井ごう)