望月昌志は若くして作家としての名声を手に入れ、妻の久子と鎌倉の古い息遣いが聞こえるような洋館に暮らしている。二人の静かな日々が孕んでいた「小さな疑問」。自身に向けられたそれは、幻聴となって昌志を苛み、義妹の広子や彼の作品を信奉する有坂らとのただならぬ仲へと彼を落としこむ。知らぬふりを通す妻。それゆえさらに乱れる夫の心。夫婦の苦しい愛はもつれていく。春雨の降る日、今はもう春の色さえ忘れてしまったと嘆く久子を、彼女を想い続けてきた昌志の友人 関が、桜を見に行こうと誘い…。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
リアルなドラマを標榜する演劇プロジェクトチーム。主宰・矢柴俊博、演出・射延憲児、脚本・日下由子、コピ-ライター・大賀郁子ら早稲田大学劇団森-Shin-出身のメンバーで1994年から活動。J・P・シャンリィや松田正隆、日下の戯曲を、激しい感情の世界もささやかな日常の隙間も、すべからくリアルな呼吸で、伝統と先鋭を秘めたドラマに仕立てる。2000年に「七分袖、ほくろ。」で、第13回パルテノン多摩小劇場フェスティバル最優秀賞を受賞。