1976年、笠井叡は精力的に活動し、この年に発表した他の三作品(「月読蛭子」「個的秘儀としての聖霊舞踏のために」「物質の未来」)と合わせて、1976年度第8回舞踊批評家協会賞受賞した。また、この年の活動に対し、市川雅が選考した「ダンス・ワーク舞踊家賞」も送られた。4作品全部を観覧した詩人の吉岡実は、「新劇」1977年8月号でその体験を織り込んだとみられる「使者 ー笠井叡のための素描の詩」を発表している。
-
近親相姦の家庭悲劇を綴ったマルキ・ド・サドの「悲惨物語」(澁澤龍彦訳)を題材に踊る。一幕五場。「舞踏作品集Ⅰ」として上演され、3月には舞踏作品集Ⅱとして、同じくマルキ・ド・サドの作品「ソドム百二十日」(澁澤龍彦訳)を、5月には舞踏作品集Ⅲとして「死美人-エドガー・アラン・ポーに寄せて」を踊った。笠井は1979年3月に発行された自身の著書『神々の黄昏』において、サドの無垢性に触れている。
同年1月の「舞踏作品集Ⅰ 悲惨物語」に続き、澁澤龍彦訳のマルキ・ド・サドの代表作「ソドム百二十日」を踊る。笠井叡は3月10日に『神々の黄昏』を上梓。笠井はその中で、サドの無垢性に触れている。5月には舞踏作品集Ⅲとして「死美人-エドガー・アラン・ポーに寄せて」が上演されるが、その後まもなく、笠井は天使館を一時封印し、オイリュトミーを学ぶために渡独する。
素戔嗚舞踏團結成公演。笠井叡はこの前年1974年7月に「天照大御神への鎮魂の舞ひ」、同年10月に「傳授の門〜現代における秘儀とは何か〜」を発表。「素戔嗚舞踏団九州公演のためのメッセージ」というテキストでは「いったい第二の天岩戸開きの真霊(まひ)がその建速素戔嗚尊御自身の舞でなくして何であろうか。」(『聖霊舞踏』)と書いている。
現代舞踊の異形ー肉体の超越と開示
舞踊批評家の市川雅がプロデュースした「現代舞踊の異形―肉体の超越と開示」展で上演された、笠井叡と大野一雄のデュオ作品。ビアズリーの小説「ヴィーナスとタンホイザー」を基とした作品で、ヴィーナス役を大野一雄が務めた。2020年3月には大野一雄の身体性を川口隆夫が、笠井叡の身体性を笠井瑞丈が踊り、他の笠井・大野デュオ2作品と共にリ・クリエイトされている。