本作は佳梯かこの依頼で鄭義信が書き下ろし、2000年のクリスマスに名古屋で一夜のみ上演された。しかしながら、再演の声が高く、早くも翌年2月に再演。佳梯はその演技で、名古屋芸術創造賞を受賞。彼女の当たり役となり、その後も幾度となく上演されることとなる。鄭が率いる演劇ユニット「海のサーカス」で2002年12月に東京公演が実現。本映像はその東京初演時のもの。2006年には同配役で韓国公演も成功させた。
古びた一軒家の一室。部屋には段ボールが積み上げられ、引っ越しの直前らしい。弁当屋に勤める小夜子と、専業主夫の達郎。物語は、二人が別れる直前のクリスマスの一夜が舞台。あれこれ片付けながら、これまでのふたりの関係を振り返るやりとりは、可笑しく、いじましい。そのうちに、すれ違いのもととなった切ない過去があらわになっていく。
「杏仁豆腐のココロ」はアジア各国で人気作品であり、韓国をはじめ中国、台湾、インドネシア等でいまも上演され、台湾では台北芸術大学の教科書にも掲載されたこともある。佳梯は2015年には相手役を久ヶ沢徹に交代して各地で巡回公演をしたが、2016年4月に急逝したため、彼女が演じたオリジナル小夜子は本映像でしか見ることができない。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1992年、鄭義信作・演出による『海のサーカス』を上演したのを機に、それを演劇ユニット名として鄭の作品を不定期で公演してきた。第2回公演『カップルズー冬のサボテンー』(1995年 新宿アイランドホール、演出=松本きょうじ、出演=篠井英介、朱源実、伊藤洋三郎、鄭義信)、第3回公演『春のキッチン』(1997年 ザ・スズナリ、演出=伊藤明子、出演=伊東景衣子、佳梯かこ、朱源実、伊藤洋三郎、鄭義信)。第5回公演『アジアン・スイーツ』以降、2006年に『杏仁豆腐のココロ』韓国公演を実現。2015年に東京、北海道、兵庫、盛岡、愛知公演をSETと組んで巡回したが、その後、休止中。