自分の愛人を絞殺しその死体から陰茎を切り取った、それがいわゆる「阿部定事件」(昭和11年)である。当時大変なセンセーショナルを巻き起こしたこの事件の「予審調書」がなぜ警察から流出したのかは未だ謎であるが、本公演では愛人とのなれそめから次第に関係を深めていき、殺しの経緯を詳しく語った部分を取り上げている。
「不思議なことにエロチックな部分はほとんど印象が薄かった。それよりもなんともいえない懐かしさがあった」と演出の鴨下は語っている。百物語シリーズ99本の中でも、最もユニークで印象深い公演の1本である。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1990年設立。主な作品に、大竹しのぶ「奇跡の人」、古田新太・生瀬勝久「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」、西城秀樹・鳳蘭・市村正親「ラヴ」、天海祐希「ピエタ」などがあげられる。(メジャーリーグHPより)
白石加代子「百物語」第十七夜
演出の鴨下さんが病気になられて、「百物語」が一時中断し、久しぶりの岩波ホールでの公演である。鴨下さんは「百物語」のコンセプトについて次のように語っている。「捨てるだけのものは全部捨てた、ヴィジュアル面もそうですが、第一覚えなくていいわけでしょ、だから記憶力も捨てた。相手役も捨てた。演劇の要素をどんどん捨てていった。だから僕は、演劇にはなりっこないと思っていた。ところが、そうやってどんどん捨てていっ
白石加代子「百物語」第十八夜
第十七夜、第十八夜は続けての上演で、その5本の作品はほとんど同時に稽古をした。そして一番時間を割いたのは「累」である。前に「江島屋」をやった時も痛感したのだが、円朝の作品と言うのは、声に出して初めて、文章のうまさ、話の運びの見事さ、人物のリアルさが見えてくる。幽霊は弱った神経が作り出すものという文明開化の時代の怪談話、そして真景、つまりリアリズムを基調とした怪談を円朝は目指したのだが、そういう意味
不思議な一座が幻のように現われ、幻のように去っていく。何もない空間から始まり、何もない空間で終わる。しかしその舞台は見る人に強烈な印象を残した。女優がハムレットやホレイショーを演じ、ガートルードやオフィーリアを男優が演じた。しかしそれが何の違和感も残さず、よりくっきりと「ハムレット」の世界を映し出し、より明確にドラマの構造を浮き彫りにした。お芝居好きの人に是非観てほしいと思います。観たこともない「
白石加代子「百物語」第二十四夜
一夜の公演で、一演目というのは初めての試みである。また、この作品は丁度八十話という節目でもある。胸突き八丁というけれど、まさに頂上がかすかに見え始めた八合目に、鴨下信一はこの作品を選んだ。鴨下さんから上がってきた台本を読んで、これは「百物語」の代表作の一つになるなと思った。登場人物がそれぞれいろんな思惑があり、悪党ばかりであくが強い。この人間臭い世界は白石加代子とぴったりあう。原作と細かく読み比べ