舞人として踊った五井輝が、前年の86年1月に死去した土方巽を追悼した公演。土方を思い出させる赤いスカートなどの衣装や音、音楽が随所に使われた。唇にはルージュを塗りたくり、背中一面に刻まれた風神雷神の入墨を見せ、剣山を自らの肉体に刺す。すべてをさらけ出して極度の集中をもって踊る五井に、「さながら土方の魂が降りたかのようだった」とThe Japan Times Weeklyのレビュー記事(1987年9月19日 Yuri Kageyama)にある。
1945年生まれ。1966年より10年間の東京創作舞踊団での活動を経て、舞人・五井輝を名乗り、舞踏家として活動。故郷・北海道の厳しい自然を原風景とした創作活動を展開した。1983年には、毎月一回続けられた小ソロ公演「納屋」シリーズ等がモダン・ダンス界からも舞踏界からも評価され、舞踊批評家協会賞を受賞。2004年度にも同賞を受賞している。代表作に「小懺悔」「墨鯨」など。2008年に死去。