琵琶湖では外来魚による固有種の生態系破壊が問題となっており、琵琶湖では外来魚のリリースは禁止され、湖周辺の釣りスポットに「外来魚回収BOX」なるゴミ箱が設置されている。しかし、釣り人の3割はこのBOXを生き物の命を粗末にする行為だと反対し、外来魚を湖に戻している。現地での取材を通じて、固有/外来/生命/生態系の対立を見つめ、両立を探った作品である。
ギリシャ悲劇「バッコスの信女」(エウリピデス作)のテーマや構造を大胆に咀嚼し現代版として描かれた新作劇。一見ふつうの主婦、人工授精によって生まれた獣人、去勢された犬、雌ホルスタインの霊魂たちによる合唱隊(コロス)が歌い上げる音楽劇。現代を彷徨う魂が奏でるドラマが、ヒトと動物の境を揺さぶり、私たちの秘めた欲望を刺激する。
就業人口約28万人、日本のGDP25%を占めるとも言う大手町・丸の内・有楽町エリア。この東京の中心で働く人たちは、何を考え、どのように生きるのか。 本作演出の倉田翠は、このエリアで働く30名以上のワーカーへのインタビューと11名の出演者=ワーカーとの約2ヶ月のワークショップを経て創作。有楽町のオフィスビルを”舞台”にしたパフォーマンスは、出演者と倉田とのコミュニケーションによって育まれる関係性から
小泉は、あいちトリエンナーレからの委嘱を受け、アイスキュロス作のギリシャ悲劇『縛られたプロメテウス』を出発点に、VR技術を使った初の本格的演劇作品を制作した。未来を予見する能力をもちつつも、ゼウスから火を盗み、人間に与えた罪で永劫の苦しみに苛まれるプロメテウス。矛盾した存在であるプロメテウスは、人間の身体がもつ有限性と、それを乗り越えようとするテクノロジーの緊張関係として捉えることができる。 VR
サエボーグ初の演劇的インスタレーションとして披露されたのは、新作含め12匹のキモかわいい家畜のキャラクターたちが楽しく暮らす巨大なリビングルームだ。観客たちは、まるでドールハウスのように設えられた遊戯的空間に招き入れられ、この奇妙な動物たちと好きなだけ時間を過ごすことができる。ラテックス製の人工の皮膜と生身の皮膚が密着し、生殖と屠殺、排泄と摂取、調教と服従が拮抗しながら共存する家畜の世界で、観客は
舞台は、東京芸術劇場の隣にある池袋西口公園。24 時間、通行人など、多様な人たちのコミュニティが形成されるこの場所に、高山は個室ユニットを連ねたインスタレーションを立ち上げた。1時間500 円の料金を支払えば、24 時間の滞在も可能。個室内では高山らが行った、公園を行き交ったりそこで暮らしたりする人々のインタビュー映像が約370人分鑑賞できる。また観客は、オプションメニューとして用意されている「避
3.11への応答「光のない。」の続編として発表されたエルフリーデ・イェリネクの「エピローグ?(光のないⅡ)」をツアーパフォーマンス形式で上演。観客はFMラジオを首に下げ、原発事故後の福島で撮影された報道写真を手に、東京・新橋の12カ所のポイントを巡る。目的地に待つのは、写真に記録された「眺め」、カメラマンの「視線」を重現する装置。さらにラジオのダイヤルを指定された周波数に合わせると、戯曲を読み上げ
東日本大震災と福島の原発事故を経て、「わたしたちの声」とはなにか、どうすればそれを聞くことができるのかという問いに、演劇的な応答が示された作品。改造保冷車の荷台に映像鑑賞ブースが設けられ、東京と福島の中学生へのインタビューが一人一枚のDVDになって並んでいる。観客は自由に鑑賞し、最後に自分自身も投票する。それぞれの戸惑いと葛藤を写し取った記録は、まだ見ぬ未来へむけたアーカイブとなった。
KAAT × Port B
芸術や都市の祝祭を更新しようとした、19世紀ドイツの歌劇王ヒャルト・ワーグナーによる歌合戦オペラ『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の「上演」に挑んだプロジェクト。8年ぶりの劇場帰還となった高山は、⺠衆芸術として描かれた “歌合戦”を現代のラップバトルに読み替え、“ストリートのオペラ”と呼ばれるヒップホップに接続し、劇場空間を現代の「歌い手」たちに解放した。ストリート化された劇場は、初日に開催さ