天草出身の巻多賀次郎は、上海を皮切りに大陸を渡り歩いた末、シンガポールに根をおろし、娼館「二十六番館」の主人となった。時は日露戦争前夜、多賀次郎と「からゆきさん」たちは、強い愛国心のもと、遠く離れた祖国と家族のために仕送りに精を出している。ついに日本は日露戦争に勝利した。しかし、時代は、彼らの思いとは反対の方向に流れ出す―。
慶応二年冬、駿州清水仲町次郎長宅から祝言の歌が聞こえているが、現れた若い渡世人綾太郎は甲州黒駒一党の不穏な動きを告げる。次いで現れた新徴組取締役山岡鉄太郎が徳川の為に一肌ぬげと次郎長を口説くがはねつけられる。婚礼の夜は一転血しぶき散る修羅場となった。宿敵の出入は多数の死者を出して一旦おさまるが、次郎長の怒りはやがて伊勢荒神山の決闘へと発展する。喧嘩出入りに明け暮れる次郎長だが、時代は江戸から明治に
米・北東部ニューイングランド地方、ゴールデンポイントと呼ばれる湖があった。朝夕照らし出される湖面はまさに《黄金》に輝き、湖畔の閑静な別荘は都会の喧騒から離れ一夏を過ごす人々のやすらぎの場であった。間もなく80歳のノーマンは厳格で頑固ものでユーモアと教養を持ち合わせていたが、老いと忍び寄る<その時>への影におびえ苛立っていた。妻エセルは対照的に変わらぬ快活さを見せているが最近の夫が気がかりだ。夫婦の
昭和の団塊世代を象徴する様な男、通称・九ちゃんは、同僚には疎まれるが何故かワンマン社長にはかわいがられている。社長は頑固一徹だが憎めない男、その妻は器量の大きな昭和の女だ。ある日、その社長が亡くなった。通夜の席、胸の内を熱く語る九ちゃんの姿を見た若い社員は、何故彼の仇名が「九ちゃん」なのかを知る。合理性と効率が求められる社会に変わりゆく中で、社長と九ちゃんと妻の間には、懐かしい昭和の人間味、友情が
戦争の傷跡が街々にまだ色濃く残る時代、銀座の夜を華やかに彩る一角があった。ジャズが、ジルバが、熱狂の一夜をつくり出す、ここは進駐軍専用キャバレー”パラダイス オブ ギンザ”。三人の男女がここで出会う。通訳志願の学生清水誠、日経米兵ケン・ナカガワ、コーラスガールの青山優子。清水は忽ち優子の虜になるが、自らの心を隠し、ケンと優子の愛の仲立ちを買って出るのだが…。青年座のオリジナルミュージカルが誕生。
(フライヤーより)お寺の池に棲む蛙たちにとって、百舌やねずみや蛇たちは、生命をおびやかす憎い敵であった。何故こういう目にあいつづけるのか──。頭をかかえこむばかりの老蛙たちをにがにがしく思っていたブンナは、持ち前の行動力を活かして、憧れの空をめざし、椎の木に登る。しかしそこで彼が見たものは、それまで自分の敵であった百舌やねずみや蛇たちが、無残にも鳶の食糧となり死んでゆく姿だった。敵の上にはさらに大
妻として、母として、歌人、詩人、評論家、小説家、童話作家として、懸命に生きた偉大なMOTHER与謝野晶子。その晶子と夫与謝野鉄幹の下、北原白秋、石川啄木、佐藤春夫、平野萬里、大杉栄、菅野須賀子、平塚明子らは集い、別れた。あの忌まわしい大逆事件を挟んだ明治42年から大正2年の5年間。若い彼らは文学に社会改革に、愛に命を燃やした。それはおかしくて、哀しくて、せつなくて、そして震えるほど美しい―。