作者・松原俊太郎が演劇と出会うきっかけとなったブレヒト作『ファッツァー』をモチーフに、第一次世界大戦中の脱走兵を戦後日本に甦った英霊にトレース。「やってきた者たち」として戦争と自らの生死について語る彼らは、ときに閉塞感に悩む日本人の現在の姿を彷彿とさせ、さらには波にさらわれた記憶を語るなど、多くの人々の生きていた時間を一身に引き受けた、どこの誰とも特定できない存在だ。反復を恐れず、たわむことのない思考は、その場に居合わせた人々になにをもたらすのか。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
多様なテキストを独自の手法で再構成・コラージュして上演する。俳優の声と身体を通して劇空間を創出。言葉の抑揚やリズムをずらす独特の発語は「地点語」とも言われ、意味から自由になることでかえって言葉そのものを剥き出しにする手法はしばしば音楽劇とも評される。代表は演出の三浦基。所属俳優は現在6名おり、すべての作品に出演している。 2005年、東京から京都へ移転。2013年、本拠地・京都に廃墟状態の元ライブハウスをリノベーションしたアトリエ「アンダースロー」を開場。レパートリーの上演と新作の制作をコンスタントに行う。2006年に『るつぼ』でカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞を受賞。チェーホフ2本立て作品をモスクワ・メイエルホリドセンターで上演、また、2012年にはロンドン・グローブ座からの招聘で初のシェイクスピア作品『コリオレイナス』を上演するなど、海外公演も行う。2017年、イプセン作『ヘッダ・ガブラー』で読売演劇大賞作品賞受賞。(法人名:合同会社地点)
ロシアの劇作家チェーホフの〈四大戯曲〉のひとつ。47歳の中年男性、鬱憤でいっぱいのワーニャとその姪・ソーニャの物語。田舎屋敷で展開する愚痴の応酬、惨めな失敗に終わるピストル騒ぎ……。地点による初演は2007年。2018年の新演出では、チェーホフによるサハリン島までの旅の記録『シベリヤの旅』をコラージュ。ルポルタージュの先駆けとも言われるこの手記により、チェーホフの冷徹とも言えるまなざし、その視線が
松原俊太郎による現代日本のフォークロア。舞台中央には一艘の舟。漁師、サラリーマン、女子高生…と様々な「日本人」が現れ、奇妙な共同体は舟に乗り込むーー。行き場を求めて右往左往する人々の姿は、不思議と深刻さからは無縁であり、祝祭空間としての劇場を強く意識させる。震災以降の日本社会に対する痛烈な批判でありながら、死者とともにあること、忘却についての哲学的論考を含む原作を一幕に再構成、地点の新しい境地を拓
言わずと知れたシェイクスピアの悲劇『ハムレット』をモチーフに、東西を分断されていたドイツで活躍した劇作家ハイナー・ミュラーが書いた、上演不可能とも言われる伝説的テキスト『ハムレットマシーン 』。地形が、家族が、暴動が、役者が、アメリカが、血と肉が、たった15ページで展開される、これでもかというイメージの応酬。暗く陰鬱な言葉からユーモアを抽出する地点の「歴史劇的牧歌劇」!
『光のない。』に続き、地点と三輪眞弘が挑むイェリネク第2弾。戦争の代替としてのスポーツ、身体から逃れられない人間の宿命を、急傾斜の芝生のフィールドで反復横跳びする俳優たちが表現。ドレミパイプを1本ずつ携えた14名の合唱隊がスポーツに絶対不可欠な観衆を体現した。ギリシア悲劇からボディビルダーまで、イメージを詰め込むだけ詰め込んだ原作テキストを身体を使い切って応えた地点随一の大作。