KERAのタイムスリップ・コメディの第一作。テクノな青春を駆け抜ける三人の女の子を通してあの時代のトーキョーを描いた、映画「1980」のプロトタイプとも言える作品。
女子高生のチカ(松野有里巳)は、高校教師のケンタロウ(手塚とおる)への恋心に駆られ、彼の過去を変えたいがために1994年から1979年にタイムスリップ。15年前の東京で、チカは福岡からの転校生ミキ(宮前真樹)、ケンタロウの幼なじみのマユミ(今井佐知子)に出会う。ケンタロウが当時やっていたバンドを売り込むことを企てたチカはマネージャーを買って出て、YMO(伊藤俊人、梶原善、西村雅彦)のヒット曲をパクリ、「元祖ライディーン」として発表、バンドはたちまち人気を集める。しかし、ケンタロウの横暴な性格のせいで、バンドは解散の危機に…。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
ナイロン100℃の前身となる「劇団健康」は、1985年、当時のインディーズバンドブームの中心的存在にあったバンド「有頂天」のボーカルを務めていたKERAを中心に、犬山犬子(現・犬山イヌコ)、田口トモロヲ、みのすけらによって旗揚げされた。ナンセンス・コメディを中心とした本公演14作品と数々の番外公演を上演し、高い評価と人気を得るも、1992年に解散。翌1993年、再びKERAを主宰として、犬山、みのすけ、峯村リエ、三宅弘城、今江冬子、藤田秀世、手塚とおるらで、ナイロン100℃を立ち上げ、1st SESSIONとして『インタラクティブテクノ活劇 予定外』を発表。
公演をSESSIONと称することに表れているとおり、劇団員に加えて客演やクリエイティブ・スタッフとともに、ナイロン100℃にしかできない表現を生んでいる。
これまでナンセンスな笑いを交えた作品をはじめ、シチュエーション・コメディ、ミステリー・コメディなどを上演してきたが、近年は岸田國士、フランツ・カフカ、別役実などをオマージュした作品や、壮大な群像劇など、多彩な舞台を発表している。
2019年、第45回公演『百年の秘密』(再演・2018年上演)にて、第26回読売演劇大賞 最優秀作品賞を受賞。
ナイロン100℃初期の代表作となった作品。南の孤島、浜辺に建つ一軒家。そこに集まる女達。平穏な夏を過ごすはずだった彼女たちを襲う数奇な運命。16年間に渡る、憎しみと許し、拒絶と理解、偶然と必然の物語。ケラリーノ・サンドロヴィッチとナイロン100℃が紡ぎだす、サスペンス・コメディの頂点。女性4人だけの出演者による濃密な作品は劇作家としての実力を広く知らしめ、この戯曲により岸田國士戯曲賞を受賞した。
ナイロン100℃流、サスペンス×ナンセンスの波状攻撃ブラック企業社長失踪事件の真実に探偵はたどり着けるのか鍵を握るのは謎のメッセージ──「今日は集合の日だ」とあるビルディングに入る会社で起きた社長失踪事件。室長の目崎(三宅弘城)、黛(大倉孝二)、その妹(鈴木杏)、若手の道下(岩崎う大)ら社員たちは社長の身を案じつつも、昼下がりのビルの屋上でのんきに過ごしている。刑事の森(みのすけ)もおざなりな捜査
2010年、執筆活動25周年を迎えたKERAが劇団に書き下ろした新作は、差別意識や偏見の問題を俯瞰しながらも、いつの間にか、もっとずっと遠くに立っている、そんな物語。その朝、廃墟と化したその街に辿り着いた五人の男女(三宅弘樹・峯村リエ・小出恵介・緒川たまき・マギー)。何が起こったのかはわからない。大地震なのか、それとも戦争なのか──。救助隊を自認する彼らが暮らしてきた街も同様の状況らしいが、「この
カフカ的緊張感と平衡感覚によって繰り広げられる、ケラリーノ・ナンセンスの金字塔。フリーライター・高野正五郎(藤田秀世)宅に1本の間違い電話が入った。それ以来、妻・マチルダ(峯村リエ)は「うちはソバ屋じゃないです」と言いながら、せっせと出前に勤しむようになる。高野は反対しながらも出前持ちやそば職人を雇い、自らの行動さえも矛盾してゆく。同じ頃、小説の仕事が舞い込んできた高野は張り切って構想を練るが、