内田百間の同名小説より、予言する神話的存在、件(頭人牛体)をカセキが体現する。生まれて3日で死ぬ運命、人間だった時の記憶と感情を反芻し、予言を求める人間達に追われ、囲まれ、待たれる。空気は期待と切望に濃厚になり、いつか観客を窒息させる。恐怖の構造、人間の欲望、愚かさを簡潔な動きと演出で、時にグロテスク、時に滑稽に表現する。誰が次の件になるのか。恐怖は体を揺さぶり突き抜ける。1998年初演。
カセキユウコはベルリン在住の舞踏家。故古川あんずに師事し、ドイツのブラウンシュバイク市立芸術大学パフォーミングアーツ科に在籍した。1995年、マーク・アテシュと共にカンパニーcokasekiを設立。ソロ、デュオ、アンサンブル作品、即興公演をヨーロッパをはじめ世界30カ国にて上演する。舞踏の身体性を基にパフォーマンス、即興の手法を取り入れ、現代社会の矛盾をテーマに、オブジェクト、テキスト、サウンドランドスケープと共に詩的、絵画的作品を創る。