演劇
アーカイブのみ

啄木伝

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啄木伝

濡れ濡れべたべた この町の実在する小都市が雨にけぶる。近代とは、限りなく現代に近い過去。足元を水が流れる。調査によりますと、わが啄木研究会の温度は、全国平均より三十五%も高い。湿気の主な原因は、工藤一先生のよだれ、寝汗、つばき、たん。しかし、なんといっても最大の要因は雨。工藤一に雨が降る。石川啄木の本名も、一。はじめの一歩。啄木は七つになるまで、母方の工藤姓を名のった。しかし、こちらの工藤一、七つの年はもうとっくに過ぎている。彼のまわりをとり囲む、否、不、未、予、異、留と名乗る七人の女たち。「啄木研究会」 まとわりついて見えかくれするナゾの女。その名も勝子。勝子は子奴?、勝子は老婆?それとも『ワーニャ叔父さん』のエレーナ?啄木と同じ澁民の出身で、啄木研究会をメシのタネにしているあやしげなる男、工藤一。彼は何者なのか?彼は啄木?この混沌たる世界に流れる、書割りの三行詩。行間を流れつたう血みどろの短歌。それはあやまちであったのか。あやまちの中に立ちつくせないのか。お前はまぎれて行く。その傷あとなしに、どうしてお前はお前であると知るのだ。人ひとり得ることがかなわなかったお前。お前を得ることがかなわなかったお前。お前はいったい誰なのだ!

視聴方法

早稲田大学演劇博物館
無償

演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。

デジタルアーカイブデータ

利用方法/利用条件について
映像管理者
有限会社劇団文化座
収録日
1986/6/17(Tue)
権利処理状況
アーカイブのみ
上演分数
105分
映像分数
105分

作品情報

上演情報
1986/6/11(Wed)~1986/6/19(Thu)三百人劇場(東京都)
出演者・
スタッフ
勝子
佐々木 愛(劇団文化座)
工藤一
阿部 勉(劇団文化座)
ソニア
今関 泉(劇団文化座)
太郎君
津田 二朗(劇団文化座)
古里氏
伊藤 勉(劇団文化座)
脚本
秋浜 悟史(フリー)
演出
鈴木 完一郎(劇団青年座)
舞台美術
石井 強司(文学座)
照明
野地 晃(AU ライティング)
音響
高橋 巖(オフィス新音)
衣装
岸井 克己(フリー)

上演団体情報

劇団文化座は戦時下の1942(昭和17)年2月26日に結成される。同年4月第1回公演梅本重信作『武蔵野』で旗揚げ。敗戦間際の昭和20年6月、日本の現代劇の紹介という名目で満州に渡り2か月後に敗戦を迎え、一年間の難民生活を経て帰国。以来、「戦争と日本人」にこだわった作品、日本の底辺に生きる人々に寄り添った作品、現代を映す鏡となる現代劇を生み出し続けている。

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