青山演劇フェスティバル「別役実の世界1997」
青山演劇フェスティバル「別役実の世界1997」
『スパイものがたり』は、演劇企画集団66によって1970年に初演された。初演のパンフレットには《これは、幕間小景とエピローグのある四場のミュージカル芝居であり、同時に、舞台空間に於ける天文学である。》とあり、小室等が率いる楽団六文銭が音楽を演奏。劇中歌の「雨が空から降れば」はフォークソングの人気曲となった。本映像は「別役実の世界1997」をテーマに掲げた青山演劇フェスティバルの第一弾となった再演版。ある日スパイがやってきて、ある日小さな恋をして、ある日突然いなくなるというお話が、電信柱が立ち、郵便ポストやベンチのある街の一隅で展開するのだが、初演と同じ常田富士男が演じるスパイらの醸し出す雰囲気と六文銭による音楽が、不条理的音楽劇にメルヘンのような優しさと切なさを加味している。エピローグの映像は27年前の初演時のものをそのまま上映したといい、「へのへのもへじの謎」を深めている。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
代表の古林逸朗は、早稲田の学生劇団で鈴木忠志や別役実の後輩だったが、退団して新たに演劇企画集団66をつくり、1966年9月に別役作の『堕天使』を演出して旗揚げ。以後も別役は古林に作品を提供し続け、演劇企画集団66は、古林演出で別役作品を上演する集団として活動を続けた。常田富士夫や維田修二らが常連の出演者となって、別役の描く不条理な世界にとぼけた味わいを加え独特の雰囲気を醸し出し、渋谷ジァン・ジァンをホームグラウンドとしていたが、1999年10月の『すなあそび』がジァン・ジァンさよなら公演となり、2000年4月に同劇場が閉館して以降、演劇企画集団66も活動を停止した。