明治七年、東西の話し言葉がテンデンバラバラだった頃。文部省官吏の南郷清之輔に「全国統一の話し言葉を制定せよ」という命令が下った。この日から、南郷家は、お国訛りをめぐって大騒ぎ。清之輔は、話し言葉の全国統一の前に、まず我が家のお国訛りによる大混乱におそわれる。カタコト英語しか喋れないピアニストの奏でる幻の「小学唱歌集」にのせて展開する、言語学的な悲喜劇の末、ついに清之輔が辿り着いた「文明開化語」とは
井上ひさしが描く、漱石的学校での不思議なひと時。晩年の漱石に多大な影響を与えたと言われる「修善寺の大患」。作風のみならず本人の死生観にまで影響を与えた三十分間の意識の空白の中、「坊っちゃん」「三四郎」「それから」「薤露行(かいろこう)」「こころ」などの多彩な漱石作品を思わせる登場人物たちが、各々が抱える「どうしようもない淋しさ」を埋めるために動き出す。"夏目漱石"評伝劇が鵜山仁の手によりこまつ座初
『明日』は1945年8月8日の長崎市のある家族の一日を描いている。戦争は緊迫の度を増す。そんな中でも無辜の民は生きる。青春の息吹き、結婚、そして子の誕生と、この一家の営みはたんたんと続いていく。8月9日未明、嫁ぎ先の長女は苦しみのあと長男を生む。あふれる喜びにつつまれる。が数時間後、午前11時2分、原爆が投下される。私達はその子の運命を知らない。
昭和17年1月8日亜也子は北浦家へ嫁いだ。祝言の日、姑・操との葛藤は火花が散り、夫・清三郎には召集令状がまい込む。姑夫婦、小姑、疎開してきた親子までを亜也子一人で養って行かなければならなくなった。土地のクセ者とわたりあい、あらゆる手段で生き抜いていく。銃後もまた戦場である。終戦をむかえても亜也子の戦いは益々困難をきわめていく。そして日はめぐり、大晦日。ささやかな餅つきの場に、戦死したはずの清三郎が
赤穂の家臣不破数右衛門は、薩摩源五兵衛と名を変え、義士の仲間に加わろうと金百両を工面していた。が、芸者小万の妖しさに惹かれ、夜毎逢瀬を重ねていた。だが、実は小万には夫三五郎があり、晴れて夫婦になるには三五郎の父に金百両を渡さねばならなかった。二人は大芝居を打って源五兵衛から金を騙し取り、夫婦であることを告げる。武士を捨て、小万との愛に生きようとしていた源五兵衛の絶望と怒り。しかしそこには驚くべき真
東京郊外の築40年ほどの一軒家を改装して作られたシェアハウス。2階に大家の春山夫妻が住み、個室の5部屋には、シングルマザー、外国人就労者、引きこもり中年などの面々が住んでいる。妻の喜代子は、食事会を開いて住人たちの相談に乗るなど、まるで母親のような存在だった。その喜代子が怪我で入院し、夫の秀夫がその代わりを務めることに――。シェアハウスで起こる身近な問題を通して、多様性を認める社会の大切さを描く。
ここは、とある町の小さなスーパーマーケット「フレッシュかねだ」。夫の会社の倒産からパートタイマーとして働くことになった秋子は、やがてこのスーパーの信じられない実態を目の当たりにすることになる。「フレッシュかねだ」起死回生を狙った”激安セール”の日は迫る!!
お寺の池に棲む蛙たちにとって、百舌や蛇や鳶たちは、生活や生命をおびやかす憎い敵であった。何故こういう目に会いつづけるのか―。それをにがにがしく思う若者がいた。ブンナだ。広い空への憧れから椎の木に登るブンナ。彼はそれまで自分の敵であった百舌やねずみや蛇たちが、無残にも鳶の食糧となり、死んでゆく姿をみる。一つの死が一つの生へとつながっていくという生きていることの実態、その意味を知ったブンナがもたらした
明治44年秋、岡崎の女子師範学校寄宿舎には、教師を夢見る少女たちが日本各地から集まっていた。誇りと若さにあふれる学舎では、下級生の憧れ、教師達も一目を置く文武両道の光島延ぶが仲間達と生活をしていた。一人の女性との出会いで未知への扉が開かれ、好奇心と夢が膨らんでいく日々であったが、ある日校長の手によって「質実剛健」の校風が「良妻賢母」にぬりかえられてしまった。少女たちの怒りは爆発し、「ストライキ」を
ファイル4577、通称ナビ・スマイル。本名年齢国籍不詳、性別男性。身長175センチ、測定誤差±2。体重64キロ、測定誤差±1。職業殺し屋。19××年のある夏の日。彼のもとに謎の依頼人がやって来る。そこからこのストーリーは始まる。宗教と奇跡。そして核とSDI。与えられた時間は、ONE WEEK。
劇団青年座創立50周年記念公演 第3弾
生まれついてけもののように生きていくしかない哀しい定めの男たちがたむろする安楽亭。そこに場違いな男がフラリ現れた。「俺は知ってるぜ。この店がどんな店か。」男は酔い潰れ、嗚咽する。ある夜、与兵衛が傷ついた若者を担ぎ込んで来た。身なりからして真面目そうなこの男もまた事情ありのようだ。「いったい、何をしたの。」おみつの言葉に身の上を話し出す富次郎。その時、他人とは関わらなかった安楽亭の男たちの血が騒ぎ始