【コンセプト】
緊急事態宣言を伴う自粛期間に体感した「様変わりしていく社会と断絶された個人」をモチーフにした演劇作品です。新型コロナウイルス感染症の蔓延によって私たちは、未知の病原体との共存が求められています。そうした新たな生活は、私たちに戸惑いと恐怖、そして過去の生活様式への郷愁をもたらしました。また、世界の国や都市は日本以上に新型コロナウイルスの影響を受け、経済の格差、人間同士の分断が起きています。そうした事態に芸術ができることは、個人の体験に寄り添いつつ作品を通して世界を相対化することだと考え、変遷していく社会に「ちょっとまって」と立ち止まり、現在地点を見直すべく本作を企画しました。
【あらすじ】
2幕3場のヴォードヴィル。登場人物は警察官の女1と、その親友で殺人を犯した女2、男性被害者である男1の3人。1場では殺人が起きた女2の自宅で遺体を発見した女1が「ちょっとまって」と驚き呼びかけ、失望とこれから訪れる悲劇的な未来予想を独白のような長台詞で終始一方的に語りかける。2場では手錠をかけられた女2が警察署へ行く道すがら過去の懺悔と郷愁を一方的に語り、3場では事件から45日を経た男1が幽霊となって現れ女2に女1のその後の生活の様子が一方的に伝えられる。なお、場面の切り替わりごとに能の間狂言の要領で、男1が前後のエピソードをマリアッチ音楽に合わせて歌う。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
オンデマンド配信。事前に会員登録が必要です。(月額1,045円)
島村和秀(演劇作家)、服部未来/MIKI the FLOPPY(ダンサー)、秋場清之(俳優・ラッパー)を中心に活動する演劇ユニット。 舞台芸術は「共生」について考えるメディアであるという信念のもと、日常生活では可視化されずらい人間の衝突や矛盾、喜びを喜劇的かつスリリングに表現するのが特徴。また、古典や近代文学の引用、ソウルミュージックや民族楽器の生演奏など、歴史や土地の文化芸術を意図的に混ぜ合わせた、 複雑でエネルギッシュな現在を表現する。