要するに、此の世は女で廻っている。
故に男が儚く散れるのだと、あるミツバチは云った。
■ものがたり
今から二百年ほど前、江戸湾の先の先に名もない小さな孤島があった。海と大地の恵みを受け、島民は豊かではないが幸せな生活を送っていた。ところがある時、江戸の豪商大島屋が孤島から続く遠浅にその財力を使い人口の島を作った。埋め立てて作ったその島に洗剤の工場を建てたのだ。「驚くほど白く落ちる」というその洗剤は江戸を中心に大ヒット。工場から絶え間なく流れ出る汚水は孤島の沿海を余すところ無く汚染し、強力な廃液はその大地まで食い尽くした。そうとは知らず今まで通り漁をし田畑を耕した島民の多くは不治の病に侵された。辛うじて難を逃れた島民は廃液に汚染されていない大地が残る島の中央部に寄り添うように集まった。そして地中深く伸びた塀を立て、大島屋洗剤工場を憎みつつ、限られた地で貧しくすさんだ自給自足の生活を送っていた。逃げ遅れた島民、病気にかかった島民は肉親であろうと決して中には入れなかった。ただひとつの外界との道は島の裏側にある廃液を逃れた海域に向かう一本の道。週に一度、海女と男がその道を抜け漁に行く。外の病人に気づかれぬよう、漁に出る時の警戒は厳重を極めるのだ。これは、そんな小さな島の閉鎖された村を訪れたある二人の浪人と、閉ざされた村人たちの物語である。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
阿佐ヶ谷スパイダースは1996年の旗揚げから、毎回キャストを集めて新作を発表する「演劇プロデュース・ユニット」として活動してきました。これは作品の多様性を高めるためには実に最適な形態であったと言えます。「劇団」と称していなかったからこそ、多くの方々と創作をする機会を得、20年間という年月解散することなく続けて来られたのかもしれません。ですが、沢山の人に支えられ活動してきた20年間で<演劇>を取り巻く状況は大きく様変わりし、同様に我々の思考も変化しました。より「過激」に自分たちの理想を追い求めるため、<より自由に><より幅広く>活動を展開していくために、2017年5月、満を持しあえて「劇団」として活動していくこととなりました。現在劇団員は 36 名。演劇を生業としている者から、会社員・主婦・学生・写真家など様々な業種の劇団員が在籍。緩やかに繋がっているような我々なりの新しいカタチを模索します。
ある夏の日、<友>が<私>を訪ねてくる…登場人物はその二人だけ。長い長い別れ話が始まった。■ものがたり蒸し焼きにされそうなある夏の日。畳の上で部屋着姿のまま床にはいつくばる「私」の前に、高校時代の同級生「友」が現れる。話を聞くと、自転車に乗ってずいぶん遠くから走ってきたという。久しぶりの再会に喜ぶ二人は、じゃれあうように会話を楽しむ。しかし、ふとしたはずみで出る「友」の言葉は、二人の間には埋めるこ
ある夏の日、<友>が<私>を訪ねてくる…登場人物はその二人だけ。長い長い別れ話が始まった。■ものがたり蒸し焼きにされそうなある夏の日。畳の上で部屋着姿のまま床にはいつくばる「私」の前に、高校時代の同級生「友」が現れる。話を聞くと、自転車に乗ってずいぶん遠くから走ってきたという。久しぶりの再会に喜ぶ二人は、じゃれあうように会話を楽しむ。しかし、ふとしたはずみで出る「友」の言葉は、二人の間には埋めるこ
2002年、ひとりの母親(オンナ)が仁義なき戦いで咲き乱れる!■ものがたり貧しくもしたたかに生きる母と高校生の娘、父親代わりと母子家庭に居候している性的に不能で無職の男。キリスト教信者の母は娘を神の子と呼び愛情を注ぐが、母に反発する娘はチンピラと家を出てしまう。一人残された彼女を支えようとするやくざ男と勤務先の店長。しかし彼女への思いの強さが周囲に悪影響を及ぼし始め、人々を狂信的な行動へと走らせる
都会を捨てた男たちが 厳寒の東北で真っ赤な果実にすべてを賭けた。■ものがたり北の小さな村に建つ、小さな潰れた工場。そこに未だ出入りする工員たちがいた。理想を求め脱サラして挑んだりんご栽培に失敗し、さらにりんごを包むスチロール、いわゆるりんごパッキン工場にも失敗した工員たち。しかし未だ諦め切れず、何をしていいかもわからず、彼らはずうっとそこにいた。そんな中、一人の消えた工員がとってきた小仕事。トラッ