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響の宴
「黒塚」は歌舞伎でも演じられる演目で安達ケ原の鬼女岩手の物語であるが、歌舞伎では岩手がどうして鬼女となったのかという物語の前段は演じられていない。今回この作品では初めての演出としてその前段を噺家の桂米團治氏が語りとして口演し長唄を聴くだけでなく観客の物語への没入と理解を促すという趣向を凝らした内容となった。演奏は杵屋勝七郎、人間国宝杵屋東成をはじめとした長唄の第一線で活躍する面々によるものである。
ほぼ全裸のパフォーマーが輪になって走り続ける『マタドウロ(屠場)』、全身を漆黒に染めたダンサーがひと塊になって観客の間を蠢きまわる『突然どこもかしこも黒山の人だかりとなる』。ブラジルの鬼才マルセロ・エヴェリンは、過去2回KYOTO EXPERIMENTで作品を発表しているが、いずれも客席と舞台が混然一体となった場の中で、観客を興奮と困惑のはざ間へと連れ出してくれた。そんなエヴェリンが次に目をつけた
ダムタイプのコアメンバーとして活躍し、パフォーマンスシーンに新たな可能性を開拓したメディア・アーティスト高谷史郎。ロームシアター京都が2017年度から取り組んでいるシリーズ「レパートリーの創造」にて、高谷史郎個人名義でのパフォーミングアーツ作品としては、8年ぶりの新作を製作しました。初等幾何学における「接線」=英語で「tangent」をキーコンセプトに、物質や空間、音や光、色彩がそれとして知覚され
《継承と創造》
金剛流は能楽シテ方五流のうち、宗家が東京以外に居住する唯一の流儀で、その芸風は”舞金剛”と称されている。この舞には「豪快」「華麗」という対照的な演技の両方が含まれているが、本企画では、その”舞金剛”の魅力を能と舞囃子で体現している。能『石橋』は金剛永謹・龍謹の二人獅子、舞囃子は海獣猩々の酔態を模した『乱』、音を立てずに拍子を踏む金剛流の専有曲『雪』。舞台空間は美術家の大舩真言が手掛ける。
久門剛史のインスタレーションは、音や立体、光と影によって詩的情景を緻密に構成し、観るものの身体感覚へダイレクトに介入する。その空間は劇場的とも評され、また、2016年にはKYOTO EXPERIMENTで初演されたチェルフィッチュ『部屋に流れる時間の旅』の舞台美術と音を担当するなど、徐々に舞台芸術への関心を高めてきた。その久門が、ロームシアター京都のサウスホールという、自身にとってかつてないスケー
金氏徹平は、京都を拠点に国内外で作品を発表している彫刻家だが、美術という枠組みを軽々と飛び越えて、さまざまなアーティスト、スペシャリストとのコラボレーションを積極的に展開している。KYOTO EXPERIMENTへは2014年に参加。作品展示を開いた会場で、ミュージシャンらを巻きこんだ4つのパフォーマンスも見せた。今回、発表される新作は、自身の映像作品『Tower』、彫刻作品『White Disc
いま・ここにいる人間のためだけではない演劇は可能か?人とモノが主従関係ではなく、限りなくフラットな関係性で存在するような世界を演劇によって生み出すことはできるのだろうか? 東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県陸前高田市では、失われた住民の暮らしを取り戻すべく、津波被害を防ぐ高台の造成工事が行われている。もとの地面から嵩上げされる高さは10メートル以上。そのための土砂は、周辺の山をその原型を留めな