製薬会社社長とその秘書は、瀬戸内海の孤島にある医学クリニックを訪れる。そこで行われている精神療法を受ける患者たちはストレスを取り除くため10歳の「こども」に返り、共同生活をすることになるが…エナメルプロデュース第2幕は石澤希代子選りすぐりの名優達と鬼才・青沼リョウスケを演出に迎え、幾度も再演され愛された傑作ホラー戯曲に挑む。小劇場界に蘇る懐かしきスリル!ショック!あなたは「大人」でいられますか?
都内某所。地方から上京するも、特に目標なくクラスフリーター・宇野千世子(33歳)は、古びた銭湯でアルバイトをしていた。そんな彼女のささやかな楽しみは、バイト終わりにとっぷりと湯船に浸かり、パラレルワールドで別の暮らしを営む自分を妄想すること。妄想に浸っている時間は、いつも千世子に安らぎを与えてくれた。だがある日、突然銭湯の取り壊しが決まり、千世子の生活は変化を迫られ…
おしゃべりだった兄の話をしようと思って、中学2年生の兄は世界の中心だったと思うんです。兄が高校1年生の時、兄の不幸の始まりでした。先に言っておくと、兄はこの先壊れます。あともう一つ言っておきますと、これは「演劇」の話ではなくて、まずこれは「兄」という「人間」の話で。壊れていく「兄」と、滅んだ「僕」と。あと兄に関わった、兄を愛したり憎んだりした「周りの人達」の。まぁ別に大した話じゃありません。
ある夫婦のはなし。子どもは10万人に1人の難病だった。海外での移植手術のために懸命な募金活動を行ったが、あと少しで目標額に届きそうな時に亡くなった。しばらくして。夫が妻に必要なくなったはずの募金活動を持ちかける。またしばらくして。ようやく目標額に達したその日。2人のもとに子どもが逃げ込んでくる。そこから事態は大きく変化していって・・・。
初夏。山あいの田舎町。父、母、兄と実家の工務店で暮らす田村鈴子は、家族間の静かな歪みに悩んでいた。表面的には仲の良い田村家だが、5年前、長女・千鶴が亡くなってから、その関係はどこかおかしくなっていた。ある昼下がり、千鶴の霊に憑りつかれた一人の女が、田村家を訪れる。それをきっかけに彼らの関係は大きく揺り動かされる。幻想的な夏の一幕をブラック・ユーモアを交えて軽妙に描く、さみしくも美しい家族劇。
なんでだろう。この部屋が、どうしても嫌いになれない。繁華街に佇むそのアパートの一室は、隣に建った看板のせいで窓からの眺めがまるで見えなかった。毎夜看板の光が色とりどりに揺れるその部屋で、伊野夏子は死んだ。二十歳を迎える少し前に、彼女はしずかに幽霊になった。数年後。そこに引っ越してきた津島一郎に自分の姿が見えていることに、夏子は気付いた。一朗は恋人を持たず、友人も少なかった。夏子は彼を気に入った─約