2002年6月18日、イスタンブールの旧市街にある貧乏旅行者専用の安宿。
その安宿の一室で、日韓のバックパッカーたちが倦怠と喧噪の日々を過ごしている。2001年の同時多発テロと、それに続くアメリカ軍のアフガニスタン侵攻によって、バスのルートが遮断され、多くのバックパッカーがイスタンブールで足止めを食らう結果となったのだ。
この日は、日韓ワールドカップのベスト16の試合日。すでに、この日の午前中に、日本はトルコに1-0で敗れて、日本人たちは意気消沈している。おりしも、韓国-イタリア戦が始まり、韓国人たちはテレビのあるロビーで大騒ぎになっている。世界情勢とは無縁なように見える、両国の若者たち。ただ、この部屋には、彼らの未来に対する漠然とした不安が漂っている。試合終了は17時、イスタンブールの長い夕暮れが始まろうとしている。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
平田オリザを中心に1982年に結成された劇団。こまばアゴラ劇場を拠点とし、 平田オリザが提唱した「現代口語演劇理論」を通じて、新しい演劇様式を追求。この演劇理論は1990年代以降の演劇界に強い影響を与え続けている。 また、複数の演出家、劇作家、多数の俳優を有し、日本では珍しい「シアターカンパニー」として活動を続けており、若手アーティスト育成の場としても着実な実績を上げ、才気あるアーティストを多く輩出している。 2020年に劇団の機能を兵庫県豊岡市に移し、豊岡から演劇作品を創作・発信している。
1909年、夏。日本による韓国の完全植民地化、いわゆる「日韓併合」を翌年に控えたソウル(当時の呼び名は漢城)で文房具店を経営する篠崎家の一日が淡々と描かれる。押し寄せる植民地支配の緊張とは一見無関係な時間が流れていく中で、運命を甘受する「悪意なき市民たちの罪」が浮き彫りにされていく。初演以来22年、国内外で上演を繰り返し、2006年アヴィニヨンをも震撼させた平田オリザ初期の伝説的作品、待望の再上演
青年団プロデュース公演
(フライヤーより)別役実氏の名作『マッチ売りの少女』を大胆に翻案し、さらに『AとBと一人の女』『象』といった初期作品群から、台詞を多数引用、コラージュする形で作品を作り上げる。初老の夫婦の食卓を、次々と訪れるマッチ売りの少女たち。その少女たちと、夫婦を中心とした街の人々との奇妙なやりとりを軸に、市民社会の脆弱さが浮かび上がってくる。
(フライヤーより)ユニークな演劇理論と演劇様式で大きな注目を浴びている青年団。舞台に繰り広げられるのは、一見とりとめのない日常のお喋り。が、いつの間にか緻密でユーモラスな”劇的”世界の迷宮に引きずり込まれます。「新しい言文一致」に基づく「新しい現代口語ドラマ」を提唱する同劇団、『暗愚小傳』ではこの方法のもと、高村光太郎、智恵子の1910年代から40年代まで四つの時代の日常シーンを描きながら、詩人が
日本を逃げ出す富裕層の倦怠と衰退を描く問題作に“無隣館”の一期生が挑む。彼らの挑戦は希望の船出となるのだろうか。近未来、南へと向かう豪華客船に乗り合わせた日本人。それぞれの想いを胸に、船はゆっくりと進んで行く。はたして、彼らは、なぜ南を目指すのか、南には、何があるのか。