ある地方都市。「北原むつ美」が、訪ねてきた「串間ひさ子」に思い出の写真を見せつつ、夫の自慢話をしている。むつ美の夫は福島第一原発の元作業員で、既に亡くなっている。明日はその四十九日にあたる。訪ねてきたひさ子の夫は、今なお原発で廃炉に向けて過酷な仕事に従事する現役の作業員。そこにむつ美の義理の妹「泊川小春」が金を無心しに来る。やがて3人の女たちの話から、原発の廃炉作業に従事する作業員たちの理不尽な日常、過酷な労働環境が次第に明らかになっていく。そして「むつ美の夫」がどのようにして亡くなっていったのか、その現実も浮かびあがってくる。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
一跡二跳を2008年に解散後、2009年に新たな演劇集団としてワンツーワークスを結成。2010年4月旗揚げ公演以降、年に2~3本の主催公演のほか地方公演多数。古城十忍のオリジナル戯曲の他、翻訳劇、ドキュメンタリー・シアターの製作を柱とし、ジャーナリスティックな社会派演劇を上演する。
霊安室前。ある男女が交通事故で死んだ。知らせを聞いて「境田」は病院に駆けつる。女は境田の妹、男は境田の会社の後輩「岬邦彦」、岬は妹の婚約者でもあった。ところが霊安室に岬の姉だという女が現れて遺体を確認し、「あれは弟ではない」と言う。不安と疑念が渦巻く中、やがて死んだ岬邦彦は名前も本籍もすべてデタラメだったことが判明、戸籍を買っていた事実が浮かびあがる。――この国において「私が私であることの証明」
会社でうだつのあがらないトキオは、レイコに思いを寄せながら、自分が彼女にふさわしい男だと思えない。ある日、永遠の時を手に入れられるという「神になる本」を目にしたトキオは、輪廻転生を信じ、意を決してビルから飛び降りる。こうして生死を超えて、愛する人を追い続けるトキオの旅が始まる。だが、それは「オイディプス」「ロミオとジュリエット」、はたまた「サザエさん」といった、すべて「あらかじめ用意された物語」を
わずかずつ、わずかずつ/気がつくたびに日1日と/部屋が狭くなってきている。11日前の水曜日/不安を抑え切れずに/金物屋から5メ—トル計のメジャ—を買ってきた/今日だって3回計測した/昨日より1回増やしたのだ/壁から壁。/決してその手は震えていなかったのに/部屋は一晩で23ミリメ—トルもちぢんでいた/一昨日から昨日にかけてが19ミリメートル/ついに20ミリメートルを超えた/部屋は加速度を増しているく
フリージャーナリスト「市井宗高」が紛争国に入り、消息を絶つ。母「順子」は無事を祈りつつ、毎日お百度参りをし、鶴を折る。宗高の友人で新聞記者の「司由起人」は順子に取材を重ねるが、宗高の妻「実花」は「これは自己責任だから」と言いだし、取材を拒否するよう順子を諫める。そんな折、テロ組織に拘束された宗高の無惨な姿がニュースで流される。一方、由起人には30歳過ぎてなお非正規雇用で苦しい生活を続ける弟「真奈人