太田省吾と劇団転形劇場による、完全な沈黙のまま極端に遅いテンポで俳優が演じる表現を追求した沈黙劇/〈駅〉シリーズの第1作。円環的な構造をもつ9つのシーンからなる。把手の壊れた水道の蛇口から一筋の水が細く流れつづけている。少女、二人の男、夫婦、老婆など、さまざまな人々が、水場を通りがかり、水に触れ、水を飲み、遠くを見つめ、やがてどこへともなく去っていく。太田と劇団にとって画期をなす作品であり、世界各地で再演を重ねた。
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1968年、演出家・程島武夫を中心に設立。1970年より演出家・劇作家の太田省吾が主宰者となる。1970年、転形劇場工房を設置(東京都港区赤坂)。1985年、劇団の拠点を東京都練馬区に移し、稽古場と小劇場を兼ねた転形劇場T2スタジオを開設。代表作品『小町風伝』(作・演出:太田省吾/1977年初演)、『水の駅』(構成・演出:太田省吾/1981年初演)は、国内外で数多くの上演を重ね、大きな反響をもってむかえられた。1985年、紀伊國屋演劇賞団体賞を受賞。1988年、解散。劇団の20年にわたる公演の記録と劇評などは、弓立社+転形劇場編『水の希望 ドキュメント転形劇場』(弓立社、1989年)にまとめられている。
日本の現代演劇ポスターデジタル化プロジェクト2023
150点の現代演劇公演のポスターをアーカイブ。公演のキービジュアルがデジタル展開され難い、1960年代から80年代を中心に、紙で現存するポスターをデジタル化。ポスターのセレクションは、1960年代以降の舞台芸術系のポスターを収集・保存、これまでも研究や数々の展覧会に協力する等、演劇公演のポスターに造詣が深い、ポスターハリス・カンパニー社代表の笹目浩之氏が担当。
太田省吾が、初期作品以来の「老い」の主題を敷衍して手がけた作品。登場人物は「老人1」「老人2」「少女」「母」など17人。中心人物の一人(老人2)が、母音でしか発話することができないという設定をもつ。ドラマは、二人の老人(老人1、老人2)による性的な記憶と幻想をめぐって展開する。一種の失語状態に陥った二人の声が、ワルツに搔き消されるところで幕切れをむかえる。
太田省吾と劇団転形劇場による、完全な沈黙のまま極端に遅いテンポで俳優が演じる表現を追求した沈黙劇/〈駅〉シリーズの第2作。舞台には、生活をとりまくさまざまな廃品の堆積した山が形づくられている(高さ5メートル、裾野20メートルほど)。登場人物たちは、幾重にも曲がりくねり頂上へとつづく一本の山道を登り、あるいはそこで休息し、山の向こうへ立ち去る。13のシーンが連鎖し、出会いと別れ、生と死、過去と現在を
音楽形式(=フーガ)と精神病理の言葉への着目を特徴とする、太田省吾による〈フーガ〉シリーズの第2作(後に『プラスチック・ローズ』と改題)。舞台は精神病院の病棟であり、棚状の寝台が設えられている。登場人物は17人(男1~7、女1~10)。靴泥棒について話し合う二人の女(女1、女2)、生活の一々を執拗に記録しようとする男(男1)など、さまざまな人物の対話がなだらかに変奏し、間人格的な齟齬が立ち現われる