生涯をかけたテーマとして戦争責任の問題を追及した木下順二の『夏・南方のローマンス』は、1987年に宇野重吉演出で初演、2013、18年に丹野郁弓の演出により上演しその今日性がふたたび鮮烈に蘇りました。庶民の目線から戦犯裁判を見つめることで、日常的で人間的な人びとの愛や苦悩が壮大な構想の下に描かれています。
劇団民藝は1950年4月3日に創立(前身は1947年発足の民衆芸術劇場=第一次民藝)。築地小劇場、新協劇団など「新劇」の本流を歩んできた滝沢修、清水将夫、宇野重吉、北林谷栄らによって「多くの人々の生きてゆく歓びと励ましになるような」民衆に根ざした演劇芸術をつくり出そうと旗あげされました。2000年からは大滝秀治、奈良岡朋子が代表をつとめ、現在は小杉勇二、樫山文枝、日色ともゑ、丹野郁弓を中心に、劇団ならではの層の厚さを生かしたアンサンブルによる密度の濃い舞台づくりをめざしています。
近代日本の曙を描く新劇の記念碑的作品。1934年、新協劇団の旗揚げ公演として初演、青山半蔵役の滝沢修の演技が絶賛されました。初演から30年周年に当たる記念すべき年、滝沢をはじめとする民藝ならではのアンサンブルで力強く厚みのある舞台を再創造しました。2部作の第1部。10景中6景のみ。幕末、木曽路馬籠宿。本陣青山家の若主人半蔵は、学問好きの多感な青年で、国学に心を寄せていました。しかし黒船の来航で街道
宇野重吉の台本・演出による近代劇の2本立て公演のうちの1作。山本有三作「嬰児ごろし」との併演。本作、武者小路実篤作「息子の結婚」は1980年11月の各地公演から翌年の東京公演まで大竹しのぶが客演。
戯曲の達人、小幡欣治の書き下ろし。2004年初演。戦前の昭和、浅草で生まれ育った小幡が望郷の思いを込めた傑作です。大滝秀治、奈良岡朋子、日色ともゑの共演が話題を呼びました。還暦を過ぎて隠居した浅草っ子のおじいちゃん、結婚したいと言い出した。相手は二十も若い吉原の花魁あがりとか。一男四女の家族会議はすったもんだの大騒ぎ。父親思いの長女が訪ねていくと、役者たちも出入りする浅草の十二階下のカフェのママで
1954年民藝初演のアーサー・ミラーの傑作戯曲。1984年は滝沢修の新演出・主演で5度目の上演、文化庁移動芸術祭をふくむ全国公演を続け、翌年1月には東京でアンコール上演。