英国演劇界の寵児、サラ·ケインの遺稿となった戯曲を飴屋法水が演出、ホーメイ (喉歌)歌手の山川冬樹と様々な国籍の職業俳優ではない役者と共に作り上げた舞台。劇場の観客席が今作の舞台。それと対面して、いつもの舞台上には特設の観客席が用意されており、ダークな照明の中、舞台前面では血のように赤いプールの水が滑らかに光っている。11人の役者たちはケインの詩のように書き連ねられた言葉を、彼らにとっての外国語=日本語で、時に短い英語も交えつつ、絞り出すように、また丁寧に語り継いでいく。強度のうつ状態で死の淵をさまよった作者の最後の声を、不調和な集合体である彼らに共同で表現させることにより、生の舞台ならではの臨場感を作り出した。山川の地の底から響くような歌声と七色の声、なみなみとした血の海、強く点滅するライトも、病んだ内的世界を印象づけた。(F/T09:Documentsより転載)
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1961年生まれ。高校在学中より唐十郎が主宰した状況劇場に参加、音響スタッフを担当。1984年、23歳にて演出家として独立、東京グランギニョルを結成。1990年代以降は現代美術に活動を移し、1995年、人工授精のプロジェクト『パブリックザーメン』でヴェネチア・ビエンナーレに参加。同年、動物商として「動物堂」を開店、動物の輸入と販売、飼育と繁殖に携わる。2005年、必要最低限の食物摂取のみで24日間箱に籠った『バ ング ント』展で活動再開。
2007年SPACでの『転校生』より演劇に復活。2009年より「フェスティバル/トーキョー」に4回連続で参加、『4,48サイコシス』『わたしのすがた』などを上演。2013年に福島県立いわき総合高校でのアトリエ公演として『ブルーシート』を発表、第58回岸田國士戯曲賞を受賞。『ブルーシート』は多くの高校演劇で上演され、フランスでも出版、リーディング公演などされる。また自身の家族3人による児童劇「教室」はドイツ・フランスでも上演された。
自身の作・演出に限らず、藤田貴大、本谷有希子、小説家の朝吹真理子、山下澄人などと演劇の共作。大友良英、山川冬樹、七尾旅人、青葉市子、テニスコーツ、小山田圭吾、渋谷慶一郎、MARKなど世代を超えた多数のミュージシャンとのコラボレーションも多い。2016年、茨城県北芸術祭での「何処からの手紙」を始めとして現代美術での発表も並行して続けている。
にしすがも創造舎の校庭に掘られた穴。そのほとりに立つことからこの作品は始まる。穴がもたらした不安定な感情を抱きつつ、観客は地図を片手に周辺の3つの不動産を巡る。今は住む人もいない場所。だがそこに配置されたオブジェやキリストの最期を描いた「十字架の道行き」から引用したテキストは、「誰か」の気配を強烈に感じさせる。どこかのお妾さんが住んだという「だいだいの家」では庭先に、2階建ての白い「半分の教会」で
1300年前の風景がいまだに残る国東半島の自然や神仏習合の文化 、半島での暮らしとそこに流れる時間を感じながら巡る一日の体験。食事も含めて、その体験がひとつの作品として提示されるのがアートツアーです。今回は演出家・飴屋法水と小説家・朝吹真理子をはじめとするメンバーが国東半島に滞在し、現地の子供たちと出会いながら、作品を製作。アーティストたちが選んだ国東半島の魅力的な場所を巡り、ひとりひとりの体験が
2013年、大阪国際児童青少年アートフェスティバル2013 TACT/FESTにて、「子供の心が動く大人の作品」というコンセプトのもと“児童劇”として制作された演劇作品。飴屋法水本人と、パートナーであるコロスケ、そして娘のくるみの3名というリアルな家族によって演じられる本作は、ドキュメンタリーとフィクションの境界を行き来しながら、ある家族の朝ごはんの風景から始まり、やがて家は教室へと変貌する。生き
飴屋法水とロメオ・カステルッチによる、初のダブルビル上演。宮澤賢治のテキストから自由に発想し、それぞれ新作「じめん」(飴屋法水)、「わたくしという現象」(ロメオ・カステルッチ)を発表。二つの才能が宮澤賢治の世界を媒介に響きあう瞬間を、1000人もの観客が野外で同時に体験する。幼少のころから宮澤賢治の作品に親しんできた飴屋法水は、その作品世界にアクセスし、物質や生命をめぐる思索を繰り広げる。会場とな