新しい演劇言語の可能性を切り拓くため、詩人の高柳誠にテキストを依頼した。高柳のテキストは、夢幻能『融』の世界を踏まえながら、舞台を日本の平安期からヨーロッパに転じ、ギリシャ悲劇『エレクトラ』や狂王ルードヴィヒ、マグダラのマリア、さらには米同時テロ以後の、われわれの現代の廃墟の記憶などが重層的に交錯するものであり、報復=正義の意味、復讐の連鎖をどのように対象化し、捉え直すことが出来るのかが問われた。
1971年、岡本章を主宰者として早大劇団「自由舞台」のメンバーを中心に結成される。創立時から現代演劇の枠に狭くとらわれることなく、伝統と前衛を切り結ぶ活動を展開。特に〈言葉〉と〈身体〉の関係を根底から問い直し、新たな〈声〉や〈身体性〉の可能性を模索する試み、また、様々なジャンルの現代芸術の表現者たちとの共同作業、そして能を現代に開き、活かす「現代能楽集」の連作など、実験的、根源的な活動を持続して行っている。1998年、イタリア、サンタルカンジェロ演劇祭、2000年に韓国、華城国際演劇祭、2012年ルーマニア・シビウ国際演劇祭、モルドバ・BITEI国際演劇祭に招聘参加。2002年、早稲田大学演劇博物館主催で企画展『伝統と前衛――錬肉工房と岡本章の30年』が開催される。
「現代能楽集」連作
旧東独の劇作家ハイナー・ミュラーの『ハムレットマシーン』では、東欧の現実が、冷え冷えとして空無化した世界が描かれているのだが、しかし同時に、そこには空無化、冷えの果ての「熱」のようなもの、非業の死者たちの声、視線があり、それは深部で夢幻能の記憶の層、身体性と繋がっている。そのため上演は、能、現代演劇、ドイツ語朗唱の共同作業として取り組まれ、その試みを通してアクチュアルで、根源的な言語、身体の相が探
「現代能楽集」連作
現代能『始皇帝』は、2003年にテキスト・リーディングの試みとして上演されたが、その後、長い時間をかけて準備を重ね、今回本格的な現代能として新たに取り組まれた。詩人那珂太郎の書き下ろしであるテキストは、漢語を主体にした簡潔で力強い文体、リズムを持つ。そして、観世銕之丞、山本東次郎、宝生欣哉などの能界の実力者の技芸、身体性と那珂太郎の根源的で斬新なテキストの言葉が切り結び、響き合うことが試みられた。
『K――カフカと恋人たち』は、阿部日奈子の詩集『典雅ないきどおり』に収められた作品「K」を基盤としながら、カフカの小説、日記や書簡の断片を自由にコラージュする形で構成され、カフカと恋人たちの不思議な愛の「かたち」、男女の権力関係が探られた。舞台世界の表出は、物語や文学の再現ではなく、強度のある〈声〉や身体表現が駆使され、現代詩、舞踏、現代演劇、現代美術の思い切ったコラボレーションとして行われた。
「現代能楽集」連作
能の本質的な構造を捉え返し、それを現代に開き、活かしていく「現代能楽集」シリーズの第一弾。主演女優関口綾子に一つの的を絞り、銕仙会能楽研修所の能舞台で上演された。スペインの現代作曲家フェデリーコ・モンポウの「沈黙の音楽」を中心的に用いて、能の老女物の秘曲『姨捨』の世界を身体的に深く読み込み、「現在」の言語素材、視座も加えながら新たな展開が試みられた。
