わずかずつ、わずかずつ/気がつくたびに日1日と/部屋が狭くなってきている。11日前の水曜日/不安を抑え切れずに/金物屋から5メ—トル計のメジャ—を買ってきた/今日だって3回計測した/昨日より1回増やしたのだ/壁から壁。/決してその手は震えていなかったのに/部屋は一晩で23ミリメ—トルもちぢんでいた/一昨日から昨日にかけてが19ミリメートル/ついに20ミリメートルを超えた/部屋は加速度を増しているくせに/それを隠して、こっそり萎もうとしているのだ。何か 伸びるものが欲しくて/消費税込み6695円のドラセナコンシンネをベッドの横に置いたが/こちらは24時間で2ミリも成長しない/このままどこまで狭まっていくのか見当がつかない/計測日誌も付け始めた/ちぢんでいることだけが事実だと認識するのに/途方もない回り道をしたような気がする/モノが多すぎるのかもしれない/モノの重さと積もる埃とか何やらで/わずかずつ、わずかずつ/歪んできたのかもしれない/きっと気がつかなかっただけなのだ/昔からおいてきぼりを食わされるのは得意だったから/所悪の根源は山のように本棚に押し込められた書籍だろう/迷わずガムテ—プでぐるぐる卷きにして粗大ゴミに出した/VICTORのスピーカーも紐で縛って捨てた/縛るとき/松任谷由美とヴァン・ヘイレンが悲鳴をあげたような気がしたが、どうってことはない/つくえも捨てた/れいぞうこもてれびもぼうるぺんもようふくだんすもてがみのたばも捨てた/今ではベッドとドラセナコンシンネがあるばかりだ/今度は ほんのすこし震えながら/計測した/部屋は3時間で4ミリメ—トルちぢんでいた/早く慣れなければいけない/そう言い聞かせた/「慣れなきゃダメだ」/声にして言い聞かせた。(フライヤー裏の文章全文、スラッシュで改行)
情報の過多が原因か、どんどん縮んでいく会社の一室で悪戦苦闘する社員たちは、ついにその原因を突きとめるのだが、それは・・・
演劇博物館別館6号館3階「AVブース」にて視聴可能です。
1986年7月の旗揚げ公演以来、2008年7月の解散公演(第60回公演)までの21年、古城十忍の作・演出による作品を上演。2009年よりワンツーワークスとして活動を再開する。
3LDKの高見家に住むのは、会社勤めのお父さん、専業主婦のお母さん、バリバリキャリアウーマンの娘、大学生の息子。一見どこにでもありそうなフツーの一家だが、ある日、お母さんのお母さんが、アキレス腱を切ったことを理由に同居を求めてやってくる。なんとか同居を断りたい高見家だったが、追い打ちをかけるようにお父さんのお父さんまでもが独り暮らしの家を売り払い、同居を求めて乗り込んで来てしまう。ずるずると窮屈な
『リセット』の3つのコンセプト-〈登場人物をリセットする〉この芝居には過去の作品に登場した人物がキャラクターもそのままに、続編のように再登場します。例えば『ONとOFFのセレナーデ』の葬儀屋のヤリタイと看護婦の深町、『眠れる森の死体』の外科医の猪瀬・境など。つまり、過去の作品の登場人物たちがこの『リセット』という作品にリセットされるわけです。〈観客がリセットする〉この作品では時間的つながり、登場人
舞台は全面、激しく急な斜面。それはリビングの床だ。その家に一人、また一人と家族が戻ってくる。どうやら家族はバラバラに暮らしていたらしい。集まった家族は激しく傾いたその床にテーブルや椅子を釘で打ちつけ、重力に逆らい、滑り落ちそうになるのを堪えながら、なんでもないことのように団欒の準備を始める。誰かを待っているのだ。やがて最後の家族の一人が現れる。それは友達を殴って「傷害致死」で少年院に入っていた末の
霊安室前。ある男女が交通事故で死んだ。知らせを聞いて「境田」は病院に駆けつる。女は境田の妹、男は境田の会社の後輩「岬邦彦」、岬は妹の婚約者でもあった。ところが霊安室に岬の姉だという女が現れて遺体を確認し、「あれは弟ではない」と言う。不安と疑念が渦巻く中、やがて死んだ岬邦彦は名前も本籍もすべてデタラメだったことが判明、戸籍を買っていた事実が浮かびあがる。――この国において「私が私であることの証明」
