ある地方都市で奇妙な交通事故が起こる。見渡しの悪い交差点、車の運転手は歩行者を発見するが、既に停止できる距離ではない。車は歩行者の数センチ手前で、まるで透明な壁に衝突するように大破した。歩行者は無傷。運転手は軽傷だったが、助手席の同乗者は重傷。目撃者は六人。保険調査員の横道はこの不可解な事故の再調査を依頼される。目撃者の一人は、これはある特別な人間「ドミノ」が起こした奇跡であると主張する。彼の発言
四国の田舎で隕石を拾った天文マニアの男たちの物語。その隕石は見た者の思考を奪い、時間を止めてしまう。誰かの手を借りない限り目をそらすことはできず、一人で見たら最後、餓死するまで見続けることになる。もう一つの特徴は、見た者に恐ろしいほどの幸福感を与え、見た時間の記憶は無く、ただ幸福感だけが残される。天文マニアと隕石の出会いから、100年後の行く末までを、日常がズレで大状況になっていく「イキウメ・スタ
音楽の手法でのマッシュアップは、異なる音源からトラックの一部をそれぞれ取り出してミックスし、一つの曲にするものである。本作は、短篇シリーズ『図書館的人生』で今まで上演されてきた『青の記憶』、『輪廻TM』、『ゴッド・セーブ・ザ・クイーン』、『賽の河原で踊りまくる「亡霊」』、『東の海の笑わない「帝王」』、『いずれ誰もがコソ泥だ、後は野となれ山となれ』の六篇を使ったマッシュアップ。過去現在未来に存在する
妻は夫に嫌気がさし、地方都市にある実家に戻って一ヶ月が経つ。離婚しか考えてなかったが、夫が一向に会いにこないことに腹を立てていた。ある日、妻は町で夫の後ろ姿を見かけ、後を追う。そこで再会したのは、荷物も携帯も持たず、自分の住所さえも知らない夫だった。夫は自分の足取りを調べる内に、東京にも自分自身が存在していることを知る。妻の兄は、このドッペルゲンガー事件を調べ始めると、この町には過去に同じような事
バイオテロで拡散したウイルスにより、人口が激減した世界を描く近未来SF。政治経済は混乱、社会基盤が破壊された数年後、感染者の中で奇跡的に回復した人々が存在することが明らかになる。彼らは免疫や代謝において人間をはるかに上回る身体に体質変化していた。変異は進化の過渡期であると主張し自らを「ノクス」と名乗るようになる。普通の人間は三割ほどになり、かつて日本と呼ばれた列島には、ノクス自治区が点在し、緩やか
ある地方都市、金輪町。住宅地の十字路。その一角に住む人々から、不審者がいるとの通報が増えた。不審者達はどこからともなく現れ、消えていく。何をするわけでもなく、時折苦しそうな表情を見せる。目を離すと、いなくなっている。幽霊という噂が立つが、目撃者は皆、確実に存在していたと話す。人の住処につきものの、ありふれた怪奇現象。その片鱗を掴んだことが、大きな間違いだった_。
ドフトエフスキー「罪と罰」に、森鴎外「高瀬舟」、芥川龍之介「杜子春」を加えたアンソロジー。人が犯してしまう“罪”と、その“罰”についての切実な疑問と深い考察が交わされる。物語の最後には、罪を憎みながらも、誰かを「許す」という行為の大切さが描かれる。
シャルル・ペローの童話「ながぐつをはいたねこ」を原作とした音楽劇。賢いねこの活躍と、それに翻弄される人間の姿を、歌と踊りでユーモラスに描く。物語の最後には、財産や名誉などではない「本当に大切なもの」への気づきを与える。
柿喰う客フェスティバル2017
穢れた家に生まれ育った族谷狗吉(長尾友里花)は、新たに生まれた妹・狗子(齋藤明里)を穢れから救い出し、自身は人間として生きたいと願った。楠木に宿る魂、大楠古多万(原田理央)は、かつて人間であった祟り神、天神様(今井由希)より、自らが「神」となったことを伝え聞く。山に棲むモグラの一族には、手の無い娘(浅場万矢)が生まれ出で、真徳丸(葉丸あすか)と呼ばれる乞食が、自らの命を舞い踊る時、西の空には巨大な
柿喰う客フェスティバル2017
やるき坂小学校ぴっかぴかの一年生の私の後ろを何者かがついてくる気配がする。後ろを振り向くとそこには、自分と同じぴっかぴかの一年生がいた!?どこに行くにも一緒、何をするのも一緒な二人は、趣味嗜好がどこまでも一緒で…「この戦いの結末は…入念に打ち合わせ済みだ!」あらゆる反則技が許された男たちの、壮絶かつ予定調和な死闘。俳優2人による意地とプライドを賭けた演劇勝負、ついに開幕。
柿喰う客フェスティバル2017
食べ物を探して森にやってきた兄(北村まりこ)と妹(永田紗茅)。ひょんなことから、人さらい(守谷勇人)に攫われ、妹はお金持ち(村松洸希)の家へ、兄はサーカス団に売られてしまう。兄は有名になり妹を迎えに行くために、サーカス団で芸を磨くことを決め、団長(とよだ恭兵)や見世物女(七味まゆ味)に教えを乞う。しかし、その大人気のサーカス団の秘密は…!?
ルウはヒモ状態の欧彦に手切れ金10万円を渡し、新しい彼氏の満太郎と同棲を始めるが、10日もしないうちに有り金を使い果たした欧彦が戻って来てしまう。何故か始まる3人の同居生活。そして、欧彦はルウの親友の杏と付き合い始める。モヤモヤしたルウは、欧彦と再び関係を持ってしまう。こんな関係よくない…と、欧彦に諭され混乱したルウは、欧彦に「死んでほしい」と、頼むのだった。
太平洋戦争最大にして最悪の地上戦「沖縄戦」激戦地首里から数キロ北にそのガマはあった。
1950年代、敗戦前の若手エリート官僚が久しぶりに集い久闊を叙す。やがて酒が進むうちに話は二人の故人に収斂する。一人は首相近衛文麿。近衛を知る参加者が近衛を演じ、近衛の最大の失策、日中戦争長期化の経緯が語られる。もう一人は外相松岡洋右。また別の一人が松岡を演じ、アメリカの警戒レベルを引き上げた三国同盟締結の経緯が語られる。更に語られる「帰還不能点」南部仏印進駐。大日本帝国を破滅させた文官たちの物語
1945年8月、朝鮮半島は35年の長きにわたる日本の支配から解放された。喜びに沸く半島で、在朝の日本人は大きな混乱に巻き込まれた。拘束され、裁かれる大日本帝国の公人たち。罪状は「支配の罪」。77年前、彼の地朝鮮半島で何が起こったのか?一人の日本人官僚の目を通して語られる「命の記憶」の物語。
松井石根孫文、蒋介石と親交を結び誰よりも日中友好を願いながら戦犯として葬られた陸軍大将その男の悔恨と最期の日々
福島三部作 第一部
1961年。東京の大学に通う青年・<穂積 孝>は故郷である福島県双葉町へ帰ろうとしていた。「もう町へは帰らない」と告げるために。北へ向かう汽車の中で孝は謎の「先生」と出会う。「日本はこれからどんどん良くなる」、そう語る先生の言葉に孝は共感するが、家族は誰も孝の考えを理解してくれない。そんな中、彼ら一家の知らぬ背景で、町には大きなうねりが押し寄せていた……。福島県双葉町の住民たちが原発誘致を決定する
福島三部作 第三部
2011年3月11日、東北全体を襲った震災は巨大津波を引き起こし、福島原発をメルトダウンに追い込んだ。その年末、<孝>と<忠>の弟にあたる<穂積 真>は、地元テレビ局の報道局長として特番製作を指揮していたが、各市町村ごとに全く異なる震災の悲鳴が舞い込み続け、現場には混乱が生じていた。真実を伝えることがマスコミの使命か? ならば今、伝えるべき真実とは一体何か? 被災者の数だけ存在する「真実」を前に、
福島三部作 第二部
福島第一原発が建設・稼働し、15年が経過した1985年の双葉町。公金の不正支出が問題となり、20年以上に渡って町長を務めてきた田中が電撃辞任した。かつて原発反対派のリーダーとして活動したために議席を失った<穂積 忠>(孝の弟)は、政界から引退しひっそりと暮らしていたが、ある晩、彼の下に2人の男が現れ、説得を始める。「町長選挙に出馬してくれないか、ただし『原発賛成派』として……」。そして1986年、
変人か、偉人か? 狂人か、天才か? 志願兵として前線にいたウィトゲンシュタインが、暗号混じりの 文章で日記帳に書きつけた『論理哲学論考』の草稿、そこから浮かび上がる、軍隊生活、死との戦い、「仕 事」への責務と欲求、愛、そして自殺の誘惑。かの有名な「語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」 という言葉の裏に隠されたウィトゲンシュタインの真意と祈りを、戦火の東部戦線という背景が炙り出す。
コドモ発射プロジェクト
予測不能な子供の閃きを元に、岩井秀人・森山未來・前野健太をはじめとする大人達が、右往左往しながら演劇作品に仕上げる、それが「コドモ発射プロジェクト」です。 野田秀樹の「子供の書いた台本をよってたかって演劇にすることはできないだろうか?」というアイディアから始まりました。 「ことば好き」の岩井、「からだ好き」の森山、「うた好き」の前野が集まり、 大人が描こうとしても描
「日本の劇」戯曲賞2015を受賞した西史夏の作品。淡路島の西側にある、海近い小さな村落”七風村”。玉ねぎ栽培が主な生業だったが、阪神淡路大震災直後に玉ねぎは竹の斜面から、太平洋戦争末期に遺棄された薬物缶が発見され、七風村産の玉ねぎの取引が中止。その後、イメージ一新のためにレモンをはじめとした果樹の生産に切り替える提案をしたのが、当時の農業組合長をしていた姫田譲だった。幸いにも軌道にのり”七風レモン